COMMENT

みんなシラノであり、クリスチャンであり、ロクサーヌ。
人間関係の心の動きだけではなく、戦争でそれぞれの人生が翻弄されてしまうという、今
に通じる世界の状況をしっかり描いている。
この作品は僕たちが生きている世界の全部が詰まった物語だと思います。

流れるように美しい映像、音楽、言葉たちに夢のような世界に誘われながらも、俳優陣のリアルな人間模様に優しく強く心揺さぶられました。
愛の喜びも、苦しみも、自分を受け入れる難しさも…全ての心の叫びが、美しく溶け込んだ作品だと思います。

コロナ渦の今、ピュアなラブロマンスは能天気なものと映るだろうか。THE NATIONALのデスナー兄弟が音楽を担当し、文芸作を映像化して来たジョー・ライトが監督する本作。
誰もがYouTubeやTikTokで自身を吐露出来るこの時代に、あえて“ミュージカル”という求愛装置を使い、♥️を謳いあげる。
恋文が綴る三角関係は、四角いSNS世界にいる僕らの壊れかけた💔を繋いでくれる。誰かを愛したことがあるか、狂おしいほど。

優しく切ない物語も、伸びやかな歌声も煌めくような美しいダンスも、キャストの演技も全てがすべて素晴らしいのだけど、とりわけ衣装とヘアメイクが最高でした！
リアリティとファンタジーを併せ持つファッションに終始目が釘付けになってました。

古典を現代風にアレンジするのではなく、古典に現代の魂と精神を吹き込むこと。
「ゲーム・オブ・スローンズ」の看板スター、ピーター・ディンクレイジ一世一代の名演が刻まれた『シラノ』はそれを奇跡的なレベルで実現させている。

シンプルな愛の歌に彩られた、超ド直球のロマンティック・ミュージカル。オリジナルの名戯曲を、さらに甘くしたストーリーの上に、冒頭シーンからカラフルなドレスの山に爆アゲ。目にも心にも潤い与えてくれる。

ハードボイルドな魅力と哀愁を併せ持つピーター・ディングレイジ、最高のシラノでは。
ザ・ナショナルのデスナー兄弟の曲が彼の渋い声にこれ以上ないほど合っている！